七色ライラック




「…あっ…」




瞬間、ぶわっと一気に熱くなる頬。


こっちを向くなんて思わなかったから油断してた。


そして微かにぶつかる視線。


目が合っただけで、もうどうしていいのかわからない。


なのに、それなのに。




(こ、こっちに来てる…!?)




何故か私の方に向かってその長い足を進めている彼。


もしかして、誰か見つけたのだろうか。


私は慌てて周りを見渡し、彼の探しているであろう"ミオ"ちゃんを探す。




「…あの、」




でも、彼がその歩みを止め声をかけたのは間違いなく私だった。


目の前に立つ彼の姿に、一陣の風が吹き抜け私の時間が止まる。




(え、え…何、で…?)




まったくこの状況が理解出来ない。




< 40 / 244 >

この作品をシェア

pagetop