七色ライラック
わけがわからなくて頭がパンク寸前の私は、ただただ彼を見つめることしか出来なくて。
頭が真っ白になるってこういうことなんだ、と初めて知った。
一歩。また一歩、彼の足が近づいてくる。
「和泉美桜さん、ですよね?」
あっという間に彼との距離はゼロになっていて。
私の前に立つ彼。
目の前には遠くから眺め続けた黒い学生服。
そして彼の声は、唇は、間違いなく私の名前を紡いだ。
(う、そ…!)
それだけで一気に上昇する全身の体温。
まるで体が発火してしまうんじゃないかと思うくらい、熱い。
緊張して限界が近くて、ただコクコクと頷くことしか出来ない私。