七色ライラック
だって、彼が私に向かって笑ってくれている。
あの、遠くから横目にしか見れなかった笑みを私に。
綺麗なその瞳に確かに私の姿が映ってる。
それだけで、こんなにも胸は高鳴って。
どうにかなってしまいそうだった。
「俺、東吾…東吾奏芽って、言います」
それなのに、目の前の彼は会話を続けるように名前を教えてくれて。
ついさっきまで、知ることなど生涯ないと思っていた彼のフルネーム。
(トウゴって…苗字だったんだ…)
それは他の人にとっては些細なことかもしれない。
でも私にとって初めて知った彼の名前は宝物のようにキラキラと輝いて聞こえた。
(東吾、奏芽…くん)