七色ライラック




心の中で彼の名前を繰り返せば、トクンと反応する心臓。


その後のことはよく思い出せない。


何とか自分の名前を伝えて、一言二言短い言葉を交わしたような気はしているのだけれど。

緊張しすぎてほとんど無意識だった。


ただ彼が"また明日"と言ってくれたことだけはちゃんと記憶に残ってる。


耳に焼き付いたその言葉。



彼の姿が見えなくなって、大丈夫?とかけられた女の子の声に私の意識はようやく現実に戻ってくることができた。




(夢、みたい)




今朝姿を見ることが出来て、それだけで一日嬉しくて。


明日も今日と同じように彼を見てまた一日幸せに過ごすんだろうと思ってた。

それだけで本当に幸せだった。




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