七色ライラック
その視線の先にあるのは俺が持っている彼女の生徒手帳。
(なんか…すげぇ嫌な予感が…)
感じた予感に背中に汗が伝う。
顔は、強張ってないだろうか。
そんな俺をよそに俺と生徒手帳を見比べた後、つかつかま歩み寄ってきた雪の手が俺の手からするりとそれを抜き取って。
僅かにその口の端が上がった。
「ふーん…和泉美桜、ね。これ奏芽の好きな子のだろ」
こないだ同じ電車に乗ってた長い黒髪の子、と確信を持って問いかけてくる雪に血の気が引く。
な、ななな…
「な、なんで知って…!?」
「…お前わかりやすすぎだから」
ポーカーフェイスを通していたつもりなのに、俺の気持ちは雪には駄々漏れだったらしい。