七色ライラック
「よし…ちゃんとクッキー、ある!」
生徒手帳を届けてもらった翌日。
私は電車の中で、今日何度目になるかわからない鞄の中に入っているクッキーの確認作業をしていた。
ラッピングも味も問題ないと思う。多分、だけど。
好みがわからなかったから、とりあえずプレーンと紅茶味の二種類を焼いてみた。
昨日のお礼に作ってきたクッキー。
でもそれは建前で、話し掛ける勇気がほしかったっていうのが本音だったりする。
(わ、渡せるかな…?)
必ず会える確証も、話せるかどうかもわからないけど。
ドキドキとありえない早さで動く心臓に目眩さえ覚えそう。
きゅっと制服の胸元を掴んで彼が乗ってくる駅までの数を数える。
あと、もう少し。