七色ライラック
ガタン、と揺れる電車。
そして
─次は、○×駅─
聞こえてきたアナウンスにドキリと心臓が高鳴った。
プシューという音とともに開いた反対側のドア。
彼がいつも乗ってくるそこから、じっと目が離せない。
(…来た…っ)
扉が閉まる直前、いつものように同じ場所から現れた彼。
どうやら今日は一人みたいだ。
彼の姿を視界に捕らえただけで緊張から手が震える。
喉はカラカラ。足は固まって動かない。
それでも目が離せなくて。
その時
パチッ
彼と、視線が交わった。
その瞬間ぶわっと一気に熱くなる体。
今にも顔から火を吹き出しそう。
硬直したまま視線を逸らすことが出来ず見つめていると、ふと彼の表情が緩んで。
小さく頭を下げてくれた。