七色ライラック
(はっ恥ずかしい…!)
熱が、身体中を埋め尽くす。
俯いたままではダメだ。何か、何か話さなくちゃ。
そう思うのに頭は上手く回らない。
近くなった距離はこんなにも私の思考を奪うのか。
ぎゅっと、鞄を持つ手に力が入る。
そんな時だった。
「……おはよ」
緊張のあまり立ち尽くしてしまった私の頭上から聞こえてきた低い声。
それは間違いなく目の前の彼のもの。
咄嗟に顔を上げれば、その綺麗な瞳が真っ直ぐに私を見ていた。
ドクン
「お、おはようござい…ます」
その瞳にまるで囚われたような気分。
恥ずかしくて挨拶すらまともに返せないのに、どうしてか目を彼から逸らすことは出来ない。
逸らしてはきっといけない。