七色ライラック
それくらい、彼の瞳には力がある。
しかし私には使命があるのだ。
この鞄の中で出番を待っているクッキーを彼に渡す。絶対に渡す。
そのために、昨日の夜から必死に台詞を練習してきたのだから。
このまま固まっているわけにはいかない。
「あ、あの…!き、きき昨日は…生徒手帳を届けていただきまして…あ、あり…ありがとう、ございました!こ、これ!よよよよかったら、お礼ですっ!」
言い切ると同時に彼に向かってクッキーを差し出した。
手のひらの震えが伝わってカタカタと小さく揺れている袋。
かなり噛んでしまったが、それでも何とか伝えたいことは言えたと思う。
あとは彼が受け取ってくれるかどうかだけ。
だけど、彼から反応は返ってこなくて。