七色ライラック
不思議に思って顔を上げれば、持っていたはずのクッキーは私の手の中にはなくて。
さ迷わせた視線が見つけたのは、目の前の彼の手に包まれている見覚えのある袋。
「…あ…」
「これ、俺が貰っていいの?」
まさか夢でも見ているのだろうか。
袋を手にしながらコテンと小さく首を傾げる彼に、一瞬何が起こったのかわからなかった。
それでも何とか無理矢理思考を動かして必死に頷く。
すると少し思案するようにじっと袋を見つめた後
「…サンキュ」
と、はにかむように微笑んで受け取ってくれた彼。
襟足に光る金色がふわりと揺れる。
そのままクッキーは彼の通学鞄の中へ。
吸い込まれるようにして入っていったそれを私は食い入るように見つめていた。