七色ライラック




(女は、度胸!)




そして勢いに任せるようにして思いっきり口を開く。




「あの!また…また明日!」




またしても声は震えていたかもしれない。

喧騒に消えてしまうくらい小さかったかもしれない。


でもこの一言だけで、人生で使う勇気の八割くらいを使い果たしてしまったんじゃないかとすら思う。

それくらい、臆病な私には勇気のいることだった。


こんなにも家族以外の男の人と話したのは初めてで。

こんな想いも初めてで。

何が正解で何がそうじゃないのかなんて全然わからない。


それでも




「あぁ。また明日」




そう笑って言ってくれたから。

私はまた、彼に一歩近付けたのではないかと自惚れてしまうのです。



精一杯の勇気を振り絞った水曜日の朝のこと。




< 75 / 244 >

この作品をシェア

pagetop