七色ライラック
「…なにニヤニヤしてんの。気持ち悪い」
そんな幸せの絶頂な俺の後ろから突然聞こえてきた声。
それに驚き慌てて後ろを振り返る。
もちろん手に持っていたクッキーは瞬時に背中に隠した。
見られて奪われる、なんて事態は是が非でも避けたい。
しかしどうやらその心配は杞憂に終わりそうだ。
「なんだ、雪か…」
振り返った先にいたのは、昨日一緒にサク女まで行ってくれた雪で。
屋上の扉を閉めてこちらに向かって歩いてくる。
今日もいつも通り怠そうにポケットに手を突っ込んでいる雪。
その姿に俺はほっと息を吐いた。
(…焦った)
直樹とか真人だったらどうしようかと思った。
あいつらには彼女の存在を知られたくない(絶対からかわれるから)。