七色ライラック
その直後、俺に向かって差し出された手とクッキーの袋。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
呆然としながら目の前で赤くなった彼女の顔を見つめる。
その白く細い手や肩は小さく震えていて。
あぁ…もう。
また、自惚れてしまいそうだ。
だってあんな可愛い顔。
思い出しただけで顔が物凄く熱い。
「…思い出し笑いすんな。キモい」
「いてっ!」
ガツッと鈍い音が屋上に響く。
それは間違いなく雪の拳が落ちた音で。
頭を叩かれた痛みに現実に戻ってくる俺の思考。てか地味に痛いんだけど。
どうやら俺の顔は自分でも気付かないくらい緩んでいたらしい。
無意識だったけどそんなに酷かったのか。
雪は露骨に嫌そうな顔をして俺を見ていた。