七色ライラック
そして叶うなら、その相手が彼女であってほしいと願った。
「…そういう奏芽は?どこが好きなんだよ」
やられっぱなしは性に合わないということだろうか。
少しの沈黙の後、ニヤリた雪が口の端を上げる。
何となくその表情に嫌な予感がするが黙ることにしよう。
雪の言葉に思い浮かべる彼女の姿。
最初は、間違いなく一目惚れだった。
でも何度も同じ電車に乗って見てきた彼女の印象は、最初の頃とは少し変わってきて。
「最初は…大人しそうな、真面目そうな感じの子だと思った」
そうだ。初めて見た彼女は見るからに"サク女生"という感じだった。
着崩されていない制服も、自然な黒い髪も、化粧っけのない顔も。
そのどれもが俺の知っている"女"とは全く違う。