七色ライラック




あの子の声も表情も全部。

自分だけに向けてほしいと本気で思ってる。




「ベタ惚れってわけね」




雪の呆れたような声に言い返す言葉も思いつかず、素直に頷いた。


こんなふうに素直に人を好きだと思うのは初めてのことで。

濃い不安の色を持ちながらも高揚していく気持ち。




「なんつーか…あの子のこと考えてるとさ、変な話だけど…俺も綺麗でいられるような気がするんだ」




いろんな意味でさ、と呟けば"それはわかる"と雪が小さく笑った。

きっと雪も同じなんだ。


何となくだけど雪の彼女も同じ空気なんだろうと思う。


俺には眩しすぎるくらい白く見える彼女。

彼女と一緒にいたら、自分も綺麗な心で恋が出来るような。そんな気がするんだ。




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