七色ライラック
驚いて起き上がり雪へ顔を向ければ、雪は腰を上げズボンの埃を払う。
「情報源は秘密な」
その顔にうっすらと浮かんでいた笑みが、俺にはこの状況を物凄く楽しんでいるように見えた。
「本気っぽいから、応援してやるよ」
相談くらいはのってやる。
そう言って片手を上げ屋上を後にする雪。
その後ろ姿を黙って見送るしか出来ない俺。
声なんて、かけられるわけなかった。
(顔、あっちぃ)
彼女のことを少し知れただけでこの様だ。
この際何で雪が知ってるのかは気にしない。寧ろ感謝。
また一つ彼女に近づけたような、そんな感覚に舞い上がる。
「明日、声かけよ」
とりあえずクッキーは誰にも渡さず一人で食べようと決めた。
快晴の空が続く水曜のこと。