七色ライラック
その瞳を真っ直ぐ私に向け、声をかけてくれている。
「あ、お、おはよう…ござい、ます」
瞬時にカラカラになった喉から声を絞り出すけど、その声は情けなく上擦ってしまった。
そしてやっぱりと言うべきか。
喉に張りついた言葉はスムーズには出てくれなかったようだ。
しかしそれを取り繕う余裕もなくなるほど、彼の瞳に映る自分の姿に体が熱くなる。
(も…無理っ)
恥ずかしくなって下を向けば、上から降ってくるクツクツと笑う彼の声。
(こんな近くで、笑ってる)
その声につられてチラリと顔を上げれば、少し眉を寄せて可笑しそうに笑う彼の顔が見えて。
また顔が熱くなっていく。
余裕なんて、あるわけない。