七色ライラック
鼓動の音はどんどん早くなって、本当に息が止まってしまいそう。
(でも…)
でも、すごく嬉しいの。
ついこの間まで見ているだけで精一杯だった人が、こんなに近くにいる。
声が聞けて、私に向かって笑ってくれる。
それはまるで奇跡みたいな出来事で。
こんな幸せなことがあるなんて知らなかった。
自然と緩む口元。
止まらないドキドキさえも嬉しいと感じてる。
そんなことを思いながら彼の制服を見つめていると(顔を見ているのは恥ずかしくなってしまった)、ふいに彼の手が伸びてきた。
「リボン、曲がってる」
小さく微笑みながらそう言って私の制服のリボンに触れる彼の手。
骨張った彼の、男の人らしい長い指がリボンをするりと撫でる。