七色ライラック
ドキン
それだけのことなのに。
ただリボンに触れられているだけなのに、まるで自分が触れられているような。
そんな不思議な気分に陥った。
(やっやだ。何考えてるの、私!?)
目の前の光景に硬直しながらも、浮かんだ思考を必死に振り払う。
怖い。何だか自分が変な人になったような気がして。
しかし、そう思っても止まらないドキドキ。
彼の指に触れられたリボンにヤキモチを妬いている自分に気付いた。
「ん。直った」
小さく一つ頷いてから、満足そうに笑って離れていく彼の手。
初めて見たその自然な笑顔にきゅんっとお腹の奥が疼く。
「あ、ありがとうございます…!」
緊張はピークに達して、そうお礼を言うだけでもう精一杯。