吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


暖かい陽射しが窓から射し込み、イオタは気持ちの良い朝をむかえた。


顔を持ち上げ、一冊の本を枕代わりにしていたことに気づく。


涎がついてページの端に染みができていた。


擦ると破けそうで、乾かそうとフゥ~フゥ~息を吹きかける。


ガチャと背中越しにドアノブを捻る音がすると、女が入ってきた。


女が来るまでの間、イオタは静かに本を閉じる。


読んでいたのは『血液の不思議』という女に薦められた本。

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