吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


「だってあなたの頬に本の跡がついてるから」


と言って女はクスクス笑う。


頬に触ると凸凹感が伝わってくる。


「それと本を汚すのはこれっきりにしてよね」


女は急に冷めた表情で注意してきた。


その変わり身の早さに驚き、イオタはこの女に隠し事は無理なのかもしれないと感じた。


それでもシータと舞台で会話した秘密は、絶対に隠し通さなければいけない。


目を合わせると見抜かれそうで、思わず視線を逸らす。

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