吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「あら、言い方がきつかったかしら。そんなに怒ってないからビクビクすることないわよ」
イオタの強張った表情を違う意味で読み取り、女は気遣いの言葉をかけてきたが、口調は尖っていた。
「有難き幸せ」
イオタはここぞとばかりに机に両手をついて頭を下げる。
「なんなの?それは?」
女は目を白黒させて戸惑い気味に尋ねた。
『血液の不思議』を読む前に、イオタは『消え去る武士道』という本を読破していた。