吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
昔の侍の生き方や潔さに感銘し、感動し、筆者の伝えたいことが脳に浸透してきた。
本の内容はイオタの脳内の赤い本に完璧にコピーされた。
それによってどうしても、有難き幸せ、という言葉を使いたくてしょうがなかった。
「き、気にしないで……」
イオタは顔を真っ赤にして、語尾を濁す。
「侍の魂が乗り移ったのかと思って心配したわ」と、女は一笑に付したあと「あなた本を読むと影響されやすい性質ね」と付け加えた。
女は『血液の不思議』の下にあった『消え去る武士道』という本を一瞥していた。