吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


「朝食の時間よ」


その声に反応して、イオタは椅子から立ち上がった。


「あら、また身長が伸びたわね。服がキチキチじゃない」


腕が自由に上げられず、濃紺のジャケットがはち切れそうになっていることを、女に言われて気づく。


女は爪先から頭までイオタを視線で舐めると、メジャーをポケットから出した。


丸いケースで巻き取れるコンパクトなロータリーメジャーで、裁縫のときに使う塩化ビニール製の代物。

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