吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


「えぇ~と……だいたい一五二センチね。中学生くらいかしら」女が両手を精一杯広げてイオタの身長を測った。「さすがに半ズボンは可哀相ね。あとで体に合ったジャケットと一緒にスラックスのズボンも持ってきてあげるわ」


イオタは半ズボンから開放される喜びで、自然と笑顔になる。


図書館の部屋から出て玄関ホールを横切り、肖像画のある部屋へ。


昨夜と同じパターンで食事が始まるのかと思ったが、すでに縦に長いテーブルの上には赤い液体が入ったワイングラスが置かれていた。


心の準備が出来ず、女に何か話しかけて時間を稼ごうとしたイオタだが、慌てて質問するとシータのことをぽろりと口から出してしまいそうで、じっとワイングラスを見詰めているだけにとどまる。

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