吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
それから、どれくらい時間が経っただろう。
一年……一時間……いや、ひょっとすると一分も経っていないのかもしれないが、精神状態が不安定になることはなかった。
時間のパズルがめちゃくちゃになっても怖さというものを感じない。
自分は時間に囚われない生き物で、例えば不老不死のような能力を持った特別な存在なのではとさえイオタは思った。
荒唐無稽な妄想に耽っていると、金属の擦れ合う不快な音をさせてドアが動く。
「シ、シータ!」
時代錯誤的な牢屋のようなドアを開けたのは、自分と同じ服を着ているシータだった。