吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「立場が逆になってしまったことを心から詫びるよ」
と言って頭を下げたシータの動きは機械的で感情がなく、乱れた長い前髪を直そうともしない。
「別にいいんだよ」
イオタが苦笑いすると、シータは怪訝そうな顔をした。
「君はなんにもわかってないね」
シータは悲しげな表情をしながら、そっと視線をドアの外へ向けた。
すると「そろそろ別れの挨拶はすんだかしら」と、女が入ってくる。
口から乱杭歯こそ出してなかったが、指に四本の注射器を挟んでいた。