吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「ど、どういうことなのシータ?」
イオタが動揺の色を浮かべて尋ねても、シータは無視して部屋から出ていく。
「待ってよ、シータ!」
「うるさいわね。採血の時間よ」
採血の時間……聞き覚えのある台詞だった。
女に無駄な動きはなく、イオタの腕に注射針を突き刺す。
「やめて!」
射された瞬間、引きつったイオタの顔だったが、シリンダーが自分の血で真っ赤に染まったときは平然としていた。
痛みはなく、覚悟した恐怖心は拍子抜けするほどしぼむ。