吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「一本目で苦しむことはないわ」
女がそれとなく理由を説明してくれた気がした。
シータは毎日かなりの量の血を採られて、あんなに虚弱化していったのではないだろうか?
「まさか意識を失っている間に、二人でコンタクトをとってるなんて思いもよらなかったわ」
と言ったあとで、女は堪えきれずに笑う。
二人でコンタクト……ということは舞台で会っていたことをシータが自ら話してしまったことになる。
イオタは遠ざかる足音が聞こえてこなかったことから、シータがまだ傍にいると感じていた。