吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


「きゃぁ~」


唇に注射器の破片が刺さったままバリッ、バリッと注射器のシリンダーを咀嚼し続け、口の周りを真っ赤に染めたイオタを見た女は悲鳴を上げる。


口を動かすごとにガラスの破片が唇に深く刺さり、口の中にも侵入してくる。


女を脅えさせるには痛がる姿を見せてはいけない。


「な、な、なんのつもり……」


女は心臓の動悸を和らげようと胸を両手で押さえる。


吐き気を催すか、顔を背けることを期待したが、神経は図太いみたいだ。

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