吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


「ひょっとひゃひゃけてくるね(ちょっと出かけてくるね)」


満足に発音できず、ちゃんと伝わったかはそれほど問題ではなく、女の脅える顔を見れなくなるのが、イオタは心残りだった。


        ★

        ★

        ★


やっぱり……。


イオタは目の前の光景を見て、落胆とも喜びともつかない複雑な表情を浮かべた。


赤い幕が垂れ下がった薄暗い舞台の上に、ベッドで拘束されている現実の世界と同じ状況が揃っている。


今回は演者側ということらしい。

< 170 / 398 >

この作品をシェア

pagetop