吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


「あの女に血を抜かれているとき、注射器に噛み付いたんだよ。一人ぼっちの舞台になる可能性もあったけど、血液ってなかなか洗い落とせないから注射器にシータの血液が僅かでも付着していれば、確実に舞台へ招待できると思ったんだ。それに飲んだ血の量の多い方が演者側になれるみたいで、大成功だね」


イオタが自慢げに説明した。


「自分の正体には気づいた?」


シータに質問され、イオタは脳内の赤い本を捲る。


人間に血を飲む習性はなく、昔の民話に出てくる吸血鬼が自分に一番当てはまるカテゴリーだと判断した。


血を吸う化け物として人間に恐れられているのに、十字架、日光、銀、ニンニク、聖画のイコンなど苦手とするものが意外と多い。

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