吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「正確には約八割の住民にピコマシンの注入が終ったところで……」と、ガンマが途中で言葉を切り、スーツのポケットから細長いチョコレートバーのようなものを取り出した。「これを使えば通話もできるし、ピコマシンを操作することも可能なのです」と得意気に見せびらかす。
チョコレートバーのようなものから、シュッと音をさせ透明なフィルムが出てくると、難しそうな数式やらグラフ的なものを表示させた画面が裏側からでもはっきり見えた。
「そんなおもちゃをもらってうれしいか?」
「あなたはこれで操られたんですよ」
ガンマが最新の通信端末を売り込む言い方をした。