吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
ビュッと斬った風が首筋を撫でた気がしたアルファは両目を閉じた。
ブラケットランプの僅かな光源を拾い集めた日本刀の刃が鈍く輝く。
観客席の階段を駆け下り、ガンマが腰の高さで日本刀をスイングする寸前、アルファが突然両目を開き、眼球に力を込め、天井のフラスコ画に向かって顔を上げた。
「おれの血はこの劇場と共にある!」
アルファの叫びに怯むことなく、光沢を携えた日本刀の刃が横にスライドされると、アルファの頭は傾斜のある階段をバウンドしながら無残に転がる。