吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
逃げ足の遅い奴だ、とイオタは過去の自分を罵る。
脳内の黒い化け物が赤い本から離れてすねた感じで立っていたので自分で捲り、時空について調べてみた。
過去の自分との遭遇は決して入り混じることのない二つの宇宙空間が存在するリスクが伴い、一方の宇宙が限界に達する破壊し兼ねないエネルギーが発生してしまうという説もある。
時空が歪んで現実の世界が崩壊するかもしれないと、ジェーンさんが言ったことの裏づけになるが、実際どうなるかなんて誰にもわからない。
もう一度「グゥオオォ~」と吠え、数日前の過去の自分に念を押して警告した。