吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
顎に手を当てながら歩いて交差点を曲がると、三人の若者が朽ち果てたシャッターの前に立っていた。
三人共ウエストにベルトがついたレザージャケットを着て、背中には骸骨の周りをコウモリが飛んでいるイラストに光沢のある銀のラメや鋲で凸プリントがしてある。
すでにシャッターには“BLACK
BIRD参上!!”という自ら所属するチーム名らしき賑々しい文字と、その下には“吸血鬼かかってこいやぁ~”と力を誇示するかのような荒々しい字体が踊っている。
真ん中の男がヘッドホンをしてリズムにノリながら、空きスペースにさらになにかを書こうとスプレー缶で赤い色を吹きかけている最中だった。