吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
チェク柄のくたびれたスーツを着て、腰が四十五度に曲がり、手が震え、指先一本で突くと倒れそうなくらい硬直して脅えていた。
『だからどうした?』と唾を飛ばして訊き返すと、『こ、こ、殺さないでくれ……殺さないと約束してくれたら、あんたに有利な情報を教えてやる。おれはジャーナリストで……』と潔白なのに刑事に恫喝され、自白してしまいそうな表情で老人は勝手に話し始めた。
内容は日本州全ての住民に補助単位のナノより千分の一小さいピコマシンというウイルスサイズの機械装置を点滴静脈注射で投与しているというもの。