ビール缶
真っ直ぐ家に帰る気分になれなかったので駅前の飲み屋へ入ろうとしたが一昨日の失態を考えると躊躇した。
「和田さーん」
振り返ると水村まなみがいた。横にはいかにも「草食系」の男を連れている。
「タカシくん、こちら私の勤め先の和田さん」
俊明はタカシと紹介された男に会釈した。きっと彼氏なのだろう。若いカップルに差して何か話すこともないので小さくじゃあ、と言ってその場をさっさと立ち去った。
帰宅すると散らかった部屋の中で電話が着信音が響いていた。床に雑然と置かれたマンガ雑誌などを避けて電話の元へ行くとディスプレイには見覚えがある番号が表示されていた。百合の番号だ。
「もしもし」
「もしもし。トミコ?今実はトスカーナにいるのよ」
「ん?……百合?」
「あ、ごめん時差計算するの忘れちゃったんだけど、今大丈夫だった」
百合は相手を間違えてることに全く気づいていないようだった。
「百合。おれ俊明。トミコさんじゃないよ」
「え。あっ?……あら、ごめんなさい」
「トスカーナにいるのか。イタリアの」
「そうよ。いいでしょう。3連休の後も休みもらって。こっちのワインは美味しいわ。どう?なんかあった」
「別に何も」
「あっそ。私本物のトミコに電話するからじゃあね」
「和田さーん」
振り返ると水村まなみがいた。横にはいかにも「草食系」の男を連れている。
「タカシくん、こちら私の勤め先の和田さん」
俊明はタカシと紹介された男に会釈した。きっと彼氏なのだろう。若いカップルに差して何か話すこともないので小さくじゃあ、と言ってその場をさっさと立ち去った。
帰宅すると散らかった部屋の中で電話が着信音が響いていた。床に雑然と置かれたマンガ雑誌などを避けて電話の元へ行くとディスプレイには見覚えがある番号が表示されていた。百合の番号だ。
「もしもし」
「もしもし。トミコ?今実はトスカーナにいるのよ」
「ん?……百合?」
「あ、ごめん時差計算するの忘れちゃったんだけど、今大丈夫だった」
百合は相手を間違えてることに全く気づいていないようだった。
「百合。おれ俊明。トミコさんじゃないよ」
「え。あっ?……あら、ごめんなさい」
「トスカーナにいるのか。イタリアの」
「そうよ。いいでしょう。3連休の後も休みもらって。こっちのワインは美味しいわ。どう?なんかあった」
「別に何も」
「あっそ。私本物のトミコに電話するからじゃあね」