蝉時雨


でもすぐにいつもの表情に戻って
憎まれ口を叩く。




「なんだそれ。
意味わかんねーやつ」

「何よー!!あ、照れてる?」

「はあ?なわけねーだろ」


にやにやと茶化す私に
京介はいつものようにあきれ顔。








「正直に言えばいいのにー」

「勘違い女」

「はあ?!何ですって?!」

「うるせーよ。ばーか」

「な!?馬鹿って、痛っ――‥‥‥」





からかう私に飛んできた京介のでこピンに
怯んで目を閉じた瞬間、おでこの痛みと同時に柔らかい感触が唇に伝わった。

引き寄せられたブランコの鎖が
キィッと小さく音を立てる。




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