蝉時雨
「‥‥‥‥‥‥っ!!」
睫毛の先が触れるほどの
距離にある京介の顔
唇に伝わる感触
数秒経ってようやく状況を
理解しはじめた頭
おでこを押さえようとして
のばしかけた両手は
そのまま空中で動きを止めている。
手だけじゃない。
いきなりのことに
体の全機能が停止したかのように
ぴたりと固まって動かない。
そのくせ今にも飛び出しそうなほどに
心臓は、ばくばくと音を立てて
忙しく動いている。
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