蝉時雨
ねぇ、涼ちゃん
菜々子はこれまで涼ちゃんのこと
“お兄ちゃん”として見たことは
一度だってないよ。
「‥‥‥‥それは」
「けど一度だって菜々子を
恋愛対象として見たことはないし、
そんな風に接したこともない」
涼ちゃんが菜々子と同じ気持ちじゃなくても
そうなることがこの先ないとしても
「そしてこの先もそれは絶対に変わらない」
「……………」
それでも菜々子は涼ちゃんがいい。
涼ちゃんが好きなの。
愛しくてどうしようもない。
「なあ、京介。
俺にとって菜々子はすげー大事な女だよ」
「…………ああ」
「血は繋がってねーけど家族だと思ってる。
そんくらい大事」
ねぇ、涼ちゃん
「でも」
涼ちゃん、大好き。