蝉時雨
理解したと同時に
その名前にどきっとする。
だって昨日―‥
「お前らなあ~
仲いいのはわかるけど
補習まで仲良くさぼってるなよな、まったく」
「べっ‥別に仲良くさぼってなんかいません」
普段通りに反応すればいいのに
それを意識すればするほど動揺してしまう。
「まぁ、ということで
小宮にも特別課題ってわけだ」
「だからってなんで菜々子に渡すの?」
「あれ?お前ら家近くだったよな?」
「そうだけど!!でも‥‥」
いつもなら難なく了承するのだが、
今日は返事に詰まる。
昨日私は京介とキスをした。
自分からねだったことだし、
キスをしたからって
涼ちゃんのことが好きなことに
なんら変わりはない。
そう
京介との関係は何も
変わってなんかいないのに
変に意識してしまって、
今京介と会うのがなんだかすごく
恥ずかしいのだ。
それに、昨日はあの後京介の家に寄ることなく
逃げるように帰ってきてしまったから、
涼ちゃんと会うのも気まずい。