蝉時雨
そんな私を不思議そうに見つめていた
山ちゃんが、何か思いついたように
にやりと口角をあげた。
「なんだぁ~?
夫婦喧嘩でもしたか?」
「なっ!?ちっがうよ!!
そんなんじゃないもん!!」
まったく‥‥。
加藤さんといい優花といい山ちゃんといい
京介と私の関係を誤解したりからかったり。
腐れ縁というのは、本当に厄介だ。
「わははっ!!青春だな!!」
「もうっ、山ちゃん!!違うってば!!」
けたけたと笑う山ちゃんと、
必死に否定する私のやり取りを見て
職員室にいる他の先生達も
小さく笑い声をあげている。
人の気も知らないで、のんきなものだ。
「すまんすまん。
だからそんな怒らずに小宮に届けてくれよ」
「‥‥え~」
「まあ、瀬戸内が2冊
解いてきてもいいけど?」
「絶対嫌です!」
「ははっ!じゃあ頼むな!!」
「~~~っはあい!!」
そうして山ちゃんの頼みに渋々納得して、
嬉しくないお土産と共に職員室を後にした。