蝉時雨
「な‥‥なんでいきなり‥‥」
「なんとなく。
いいじゃん。もう一回してんだし」
「それは、そうだけどっ‥‥!」
たじろぎながら京介を見るけれど、
京介は相変わらず不敵な笑みを浮かべたまま
どこか楽しそうだ。
でも目は全然笑ってなくて、
真意の読めないその表情に更に戸惑う。
そんな私をよそに京介は
どんどん話を進めていく。
「じゃあいいじゃん。な?」
だんだん距離をつめてくる京介。
「ちょっ‥‥と」
さすがにやばいと思って後退りをしながら、
どうにか距離を開こうとしていたら
京介に右手首を掴まれてしまった。