蝉時雨





「ちょ‥‥ちょっと待ってよ!!」




私が叫んだのと同時に
京介の動きがぴたりと止まる。
でも手首は強く掴まれたままだ。

京介が何を考えてるのか全然わからない。








「ちょっと待って!」

「何?」

「京介、今日なんか変だよ」

「‥‥‥‥‥‥」

「ね、ねえ。ふざけてるんだよね?
どうせまた菜々子のこと
からかってるんでしょ」


冗談ぽくいつものようなノリで言ったつもりがうまく笑えず、顔が引きつる。

京介はしばらく無表情のまま私を見つめた。
そして口元をにやりとあげて
またあの冷たい笑顔になった。







「‥‥冗談だと思う?」







< 150 / 225 >

この作品をシェア

pagetop