蝉時雨
「ちょ‥‥ちょっと待ってよ!!」
私が叫んだのと同時に
京介の動きがぴたりと止まる。
でも手首は強く掴まれたままだ。
京介が何を考えてるのか全然わからない。
「ちょっと待って!」
「何?」
「京介、今日なんか変だよ」
「‥‥‥‥‥‥」
「ね、ねえ。ふざけてるんだよね?
どうせまた菜々子のこと
からかってるんでしょ」
冗談ぽくいつものようなノリで言ったつもりがうまく笑えず、顔が引きつる。
京介はしばらく無表情のまま私を見つめた。
そして口元をにやりとあげて
またあの冷たい笑顔になった。
「‥‥冗談だと思う?」