蝉時雨
「――――‥‥っ」
京介の表情が変わったのを確認した瞬間、
握られた手に力が入り
ぐんと体を引き寄せられる。
「待っ‥て!!京介っ!!」
「‥‥‥‥」
「ねぇ!!京介ってば!!」
必死に抵抗していたけど
迫ってくる京介をなんとか押し返していた
左腕もとられてしまい、
勢い良く床に押し倒される。
「京介っ、ねぇ‥‥」
恐怖なのか
パニックになってるだけなのか
いつもと違う京介に戸惑っているのか
よくわからない感情に泣きそうになりながら
京介の名前を呼ぶ。
「‥‥‥‥‥」
「京介っ‥!お願い、待って」
何を言っても京介の表情は変わらない。
ただ冷たく私を見下ろすだけ。
必死に逃れようとしても
私を拘束する力は弱まらず、
京介の顔がどんどん近づいてくる。
「―――‥‥っ‥や‥!!」
唇が触れるまであとわずかに迫ったところで
ばたつかせた足で思いきり京介のお腹を蹴った。