蝉時雨
「菜々子用事思い出したから
今日は帰るね!!」
「え?」
「おばちゃんにごめんなさいって
伝えておいて!!」
「ちょっ、菜々子‥‥」
「‥‥じゃあ行くね!お邪魔しました!」
ろくに涼ちゃんの顔も見ないまま
それだけ言うと、
逃げるように京介の部屋を後にした。
そのまま涼ちゃん家を飛び出して家まで走る。
菜々子はずっとずっと
涼ちゃんのことが好きで、
でも涼ちゃんには婚約者ができて。
京介とキスをして、
京介が菜々子を好きだと言った。
いろんなことが起こりすぎて、
考えることがありすぎて
何が何だかわからない。
まず最初に考えなきゃいけないのは?
京介になんて答えたらいい?
菜々子の気持ちは?
ぐちゃぐちゃな頭で必死に考えるけど、
どうしたらいいのかも
自分がどうしたいのかも全然わからない。
でも一つだけ、
はっきりわかることがある。
私、最低だ。
-蝉時雨 4日目 END-