蝉時雨





京介の家に着くと、
出かけようとしていた
典子おばちゃんと玄関先で鉢合わせた。




「あら、菜々ちゃん。
今日は遅かったわね」

「おばちゃん、京介は?いる?」

走ってきたせいで
肩で息をしながら尋ねる。




「あのこ、ついさっき
出かけていったとこなのよ。
帰ってくるとは思うんだけど‥‥」

「そっかあ‥‥。
菜々子がもう少し早く来ればよかったね」




うだうだ悩んでないで
すぐに謝りに来てればちゃんと会えたのに。

そんな後悔と、とことんだめな自分に落胆して
肩を落とした。
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