蝉時雨
*
京介の家に着くと、
出かけようとしていた
典子おばちゃんと玄関先で鉢合わせた。
「あら、菜々ちゃん。
今日は遅かったわね」
「おばちゃん、京介は?いる?」
走ってきたせいで
肩で息をしながら尋ねる。
「あのこ、ついさっき
出かけていったとこなのよ。
帰ってくるとは思うんだけど‥‥」
「そっかあ‥‥。
菜々子がもう少し早く来ればよかったね」
うだうだ悩んでないで
すぐに謝りに来てればちゃんと会えたのに。
そんな後悔と、とことんだめな自分に落胆して
肩を落とした。