蝉時雨
*
家の中には誰もいない。
最初のうちは
いつ帰ってくるかと緊張しながら
京介にどう話しかけるかどう謝ろうかと
頭を悩ませていたけど、
待てど暮らせど京介は戻ってこない。
ここにきてもう二時間が経とうとしてる。
緊張感はすっかりなくなって、
とうとう考えるのにも飽きてしまい
京介のベッドの上に座って漫画を読んだ。
「うーーーん」
二冊めを読み終えたところで
大きく伸びをすると、
脱力と同時にベッドに倒れこむ。
「‥‥‥‥‥暇だなあ」
静まり返った部屋の中、
見慣れた天井に向かってぽつりと呟いた。
そうしてみても聞こえてくるのは
相変わらず、
ブーンと無機質に唸る機械音と
騒々しい蝉の声だけだ。