蝉時雨


そのままごろんと寝返りをうって
部屋の中を見渡す。
ふと視線を向けた縦長いラックの上に
置かれている写真立てを見つけた。




「わあ!懐かしい!!」




体勢を起こして飾られた写真を見る。

写っているのは京介と涼ちゃんと私。
あどけなさが残る笑顔を浮かべている
中学生の涼ちゃんを真ん中に
幼稚園の制服を着た私が
ぴったりと頬を寄せて嬉しそうにしている。

涼ちゃんに肩を寄せられた京介は
相変わらず不機嫌そうな表情を浮かべている。








「あはは、京介相変わらず無愛想!
変わらないなあ」

懐かしさに目を細める。



そうだ。
もうこの頃から私は
涼ちゃんのことが好きだった。


あれからもう10年以上経った今でも
ずっとずっと変わらずにいる想い。





だけど

どんなに月日を重ねても
大人になりたいと思っても
私達の間の距離は埋まらないまま。

どうしたって
私が涼ちゃんに追い付くことはない。







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